世界遺産

世界文化遺産「 五箇山の合掌造り集落 」について

 

 1995年(平成7年)12月、ドイツのベルリン市で開催されたユネスコの第19回世界遺産委員会において、岐阜県白川村荻町、富山県五箇山相倉、菅沼の3つの集落が「白川郷・五箇山の合掌造り集落」の名のもと、世界遺産一覧表に文化遺産として記載されることが決定しました。かつては庄川沿いに立ち並んだ茅葺き屋根の集落群のうち、合掌造り集落として現存する白川郷の荻町は大規模集落、五箇山の相倉は中規模集落、菅沼は小規模集落を代表する3つの異なる規模の集落が偶然にも保存されてきたのです。記載承認にあたっては6つの価値基準のうち、Ⅳ)歴史上の有意義な時代を示す優れた建造物や建築物群、景観の例 Ⅴ)ある文化を代表する伝統的集落や土地利用の典型的な例で、消滅の危機にあるものにおいて顕著で普遍的価値を有していると認められました。これは日本における世界遺産全体としては6番目、世界文化遺産としては4番目(法隆寺・姫路城・古都京都の文化財に次)の登録です。五箇山の2つの世界遺産集落、相倉、菅沼は、その20年前、1970年(昭和45年)に国の史跡指定を受けています。人が住んでいる地区が国の史跡となった稀有な事例です。1994年(平成6年)には両集落ともに国の重要伝統的建造物群保存地区に選定されています。

 

 合掌造り家屋には、気候風土や山間の村での生活に適合したいろいろな工夫が凝らされています。同じ合掌造り家屋でも、白川郷と五箇山では土間の取り方や入口の位置が異なり、妻に庇を付ける五箇山に対して付けない白川郷など、地域によるいくつかの相違点も見られます。合掌造り家屋は白川郷と五箇山地方に限定して見られる民家形態で、その数は最大時1,850棟あまりでした。戦後の経済発展と生活の近代化の中で、その数が急激に減少し、現在では白川郷、五箇山あわせて200棟以下となり、1棟1棟がたいへん貴重な存在となっています。白川郷と五箇山地方の合掌造り家屋は、最も発達した合理的な民家形式の1つであり、日本の木造文化を代表するものです。特色のある合掌造り家屋群を中心とする農村景観は世界的に価値のある貴重な文化遺産と評価されているのです。

 

 

 

五箇山には つ の世界遺産集落がある

 

 

 

 

山々に囲まれどこか懐かしくあたたかい

 

 相倉集落は標高約400mの河岸段丘にあり、北東から南西へ約500m、南東から北西へ200~300mの細長い平坦地に屋敷地と耕作地があります。さらに北西および南東の傾斜地の一部にも茅場などの耕作地があります。集落背後にはブナ、トチ、ミズナラなどの大木が生い茂り、集落を雪崩などから守る雪持林として伐採は禁じられています。

 相倉集落は、かつて五箇山でも最も養蚕の盛んな集落でしたが、米の自給が進められ、養蚕も衰退をたどった1950年(昭和25年)頃に桑畑は水田へと開拓されました。その他の畑は、傾斜地を開墾してつくられ、主に野菜や豆類が栽培されていました。水田への水は、山から流れ出る谷川の水を引き込み、山際から湧き出た水と合わせ、いくつかの水路に分けて供給しています。

 相倉集落の重要伝統的建造物群の主体をなす建築物は、「合掌造り」の家屋20棟です。これらの多くは江戸時代末期から明治時代(19世紀前期~20世紀初期)に建てられたものですが、最も古いものは17世紀に遡ると推察されています。新しいものは20世紀前半のものが3棟あり、この時代まで合掌造り家屋がつくられていたことがわかります。 これらに加えて、合掌造りを木造二階建に改造した家屋、非合掌造りの木造家屋、これらの附属建物である土蔵、板倉、そして相念寺、西方道場、入母屋造り、地主神社拝殿などの宗教建築物、石造工作物によって伝統的建造物群が構成されています。また地主神社の境内社叢、旧主要道、石垣、水路、雪持林なども含まれています。

 集落内には「相倉民俗館」、「相倉伝統産業館」などの資料館やお土産店、お食事処(2軒)そして合掌造りのお宿が6軒あります。集落駐車場からは段々畑を登り高台に上ると、集落を一望できる撮影スポットがあります。往復で徒歩約20分です。今も昔ながらの生活が息づく、山間の小さな集落で、山里の素朴な人情と伝統文化に触れることができます。

 

 

 

 

川沿いにたたずむ昔ながらの風景

 

 集落は庄川が蛇行しながら東へ流れを変える地点の右岸の、南北約230m、東西約240mの舌状に北に突出した河岸段丘、標高は約330mのほぼ平坦な地にあります。段丘の南背後は急傾斜の山地となっており、ブナ、トチ、ミズナラなどの大木が生い茂木の伐採は禁じられていて、雪持林として保存されています。

 以前は桑畑などを栽培していた土地は、戦後、対岸より水を引き水田として整備されました。

 菅沼集落の重要伝統的建造物群の主体をなす建築物は、「合掌造り」の家屋9棟です。これらのうち、2棟は江戸時代末期(19世紀前~中期)、6棟は明治時代に建てられたものです。このほか、1925年(大正14年)に新築されたもの1棟があり、この時代まで合掌造り家屋がつくられていたことがわかります。これらに加えて、非合掌造りの木造家屋、これらの附属建物である土蔵、板倉および水車小屋、宗教建築(神明社)などの建築物と、石造工作物によって伝統的建造物群が構成されています。また、湧水池と神明社の社叢も含まれています。

 集落内には五箇山の歴史と伝統を学べる「五箇山民俗館」や江戸時代五箇山の一大産業であった火薬の原料、塩硝の製造過程を展示する「塩硝の館」があります。また郷土料理を味わえるお食事処(3軒)や茶房、和紙や山菜など五箇山の特産品などがならぶお土産店もあります。 のどかで閑静な環境でお寛ぎください。